RA270Eは、あくまでも試作エンジンであったため
64年シーズン参戦に向けて実戦型エンジンRA271Eの
開発が急ピッチで進められた、さらに急遽準備しなけ
ればならなくなったシャシーも、RA270Fのデータを参
考にしながら、まったく別の開発メンバーによって設
計が行われた。

 64年当時、最先端のチームはすでに鋼管スペースフ
レームシャシーから軽合金パネル構成したモノコック
フレームシャシーヘの移行を始めていた、そこへ旧態
依然としたシャシーを投入しても意味がない、ホンダ
の技術陣は新たに最先端のアルミモノコックシャシー
を開発する決断を下す、しかし本格的モノコックシャ
シーの開発はホンダにとって初めての体験であった為
航空機関系を含む様々な資料を参照しながらの作業と
なった。
またホンダはエンジン
開発の基本コンセプト
を決める際、シャシー
搭載時慣性モーメント
を減らす事で操縦応答
性を高めるアイデアを
温めていた。


*開発に使用されたクーパーF1と田中禎助氏

結果、X型12気筒エンジン横置が決まったのである
 エンジン横置きは、縦置きレイアウトが常識だった
当時のFlグランプリにあって、極めて画期的なアイデ
アだった、だがホンダにとっては実績ある2輪レーシン
グマシンの構造ノウハウを、そのまま応用できるとい
う利点もあったのである。

しかし、全長の大きなX型12気筒エンジンを横置きに
すれば、車体後部の横幅が広くなりすぎてしまう、オ
リジナルシャシーを開発する際に、この間題を解決し
なければならなかった。

ホンダの技術陣はこの課題を検討した結果、エンジンを
シャシーの一部とするアイデアに行き着いた、 当時
モノコックフレームにエンジンを搭載する場合、通常は
モノコック後端都を後方へ延長し、舟状構造を造って
そこにエンジンを収めるのが一般的だった。

 しかし、横置きとしたことで幅のかさむX型12気筒
エンジンを、さらに両側から抱え込むフレームで構成す
ると、車体はきわめて幅広なものになってしまう、そこ
で、技術者はモノコックをコクビット背後で切り落とし
鋼管スペースフレームを後方に伸ばしてエンジンをマウ
ントする方法を考え出した。

 もっともこうした画期的なフレーム構造が、すんなり
と決定したわけではない、 シャシー設計者がエンジン
をフレームの一都として流用する案を示したときに、エ
ンジン設計者たちは一斉に反対したという、振動でエン
ジンに歪みが出て回転が渋くなるというのが、その理由
だった。

 それでもホンダX型12気筒エンジンが見た目にも相当
な強度を持っていそうだったことを頼りに、エンジンを
フレームの一部として流用するアイデアが実現する事と
なる。 

 加えてシャシー設計で、スプリングダンバーユニット
をアウトボードではなく、車体の中央部にインボードマ
ウントとするアイデアも採用された、 これによりスプ
リングダンバーユニットをボディー内に収める事となり
空力面での性能向上が期待された。

 こうしてホンダの技術陣は、様々なアイデアを考え出
しては設計に盛り込みつつ、実戦用シャシー、RA271の
開発を進めていったのである。